Podが稼働するNodeを特定のものに指定したり、優先条件を指定して制限することができます。 これを実現するためにはいくつかの方法がありますが、推奨されている方法はラベルでの選択です。 スケジューラーが最適な配置を選択するため、一般的にはこのような制限は不要です(例えば、複数のPodを別々のNodeへデプロイしたり、Podを配置する際にリソースが不十分なNodeにはデプロイされないことが挙げられます)が、 SSDが搭載されているNodeにPodをデプロイしたり、同じアベイラビリティーゾーン内で通信する異なるサービスのPodを同じNodeにデプロイする等、柔軟な制御が必要なこともあります。
nodeSelector
は、Nodeを選択するための、最も簡単で推奨されている手法です。
nodeSelector
はPodSpecのフィールドです。これはkey-valueペアのマップを特定します。
あるノードでPodを稼働させるためには、そのノードがラベルとして指定されたkey-valueペアを保持している必要があります(複数のラベルを保持することも可能です)。
最も一般的な使用方法は、1つのkey-valueペアを付与する方法です。
以下に、nodeSelector
の使用例を紹介します。
この例では、KubernetesのPodに関して基本的な知識を有していることと、Kubernetesクラスターのセットアップがされていることが前提となっています。
kubectl get nodes
で、クラスターのノードの名前を取得してください。
そして、ラベルを付与するNodeを選び、kubectl label nodes <node-name> <label-key>=<label-value>
で選択したNodeにラベルを付与します。
例えば、Nodeの名前が’kubernetes-foo-node-1.c.a-robinson.internal’、付与するラベルが’disktype=ssd’の場合、kubectl label nodes kubernetes-foo-node-1.c.a-robinson.internal disktype=ssd
によってラベルが付与されます。
kubectl get nodes --show-labels
によって、ノードにラベルが付与されたかを確認することができます。
また、kubectl describe node "nodename"
から、そのNodeの全てのラベルを表示することもできます。
該当のPodのconfigファイルに、nodeSelectorのセクションを追加します: 例として以下のconfigファイルを扱います:
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: nginx
labels:
env: test
spec:
containers:
- name: nginx
image: nginx
nodeSelectorを以下のように追加します:
pods/pod-nginx.yaml
|
---|
|
kubectl apply -f https://k8s.io/examples/pods/pod-nginx.yaml
により、Podは先ほどラベルを付与したNodeへスケジュールされます。
kubectl get pods -o wide
で表示される”NODE”の列から、PodがデプロイされているNodeを確認することができます。
明示的に付与するラベルの他に、事前にNodeへ付与されているものもあります。 以下のようなラベルが該当します。
kubernetes.io/hostname
failure-domain.beta.kubernetes.io/zone
failure-domain.beta.kubernetes.io/region
beta.kubernetes.io/instance-type
kubernetes.io/os
kubernetes.io/arch
備考: これらのラベルは、クラウドプロバイダー固有であり、確実なものではありません。 例えば、kubernetes.io/hostname
の値はNodeの名前と同じである環境もあれば、異なる環境もあります。
Nodeにラベルを付与することで、Podは特定のNodeやNodeグループにスケジュールされます。 これにより、特定のPodを、確かな隔離性や安全性、特性を持ったNodeで稼働させることができます。 この目的でラベルを使用する際に、Node上のkubeletプロセスに上書きされないラベルキーを選択することが強く推奨されています。 これは、安全性が損なわれたNodeがkubeletの認証情報をNodeのオブジェクトに設定したり、スケジューラーがそのようなNodeにデプロイすることを防ぎます。
NodeRestriction
プラグインは、kubeletがnode-restriction.kubernetes.io/
プレフィックスを有するラベルの設定や上書きを防ぎます。
Nodeの隔離にラベルのプレフィックスを使用するためには、以下の3点を確認してください。
node-restriction.kubernetes.io/
プレフィックスのラベルを付与し、そのラベルがnode selectorに指定されていること。
例えば、example.com.node-restriction.kubernetes.io/fips=true
または example.com.node-restriction.kubernetes.io/pci-dss=true
のようなラベルです。nodeSelector
はPodの稼働を特定のラベルが付与されたNodeに制限する最も簡単な方法です。
Affinity/Anti-Affinityでは、より柔軟な指定方法が提供されています。
拡張機能は以下の通りです。
Affinityは”Node Affinity”と”Inter-Pod Affinity/Anti-Affinity”の2種類から成ります。
Node affinityはnodeSelector
(前述の2つのメリットがあります)に似ていますが、Inter-Pod Affinity/Anti-Affinityは、上記の3番目の機能に記載している通り、NodeのラベルではなくPodのラベルに対して制限をかけます。
nodeSelector
は問題なく使用することができますが、Node affinityはnodeSelector
で指定できる条件を全て実現できるため、将来的には推奨されなくなります。
Node Affinityはα機能としてKubernetesのv1.2から導入されました。
Node Affinityは概念的には、NodeのラベルによってPodがどのNodeにスケジュールされるかを制限するnodeSelector
と同様です。
現在は2種類のNode Affinityがあり、requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
とpreferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
です。
前者はNodeにスケジュールされるPodが条件を満たすことが必須(nodeSelector
に似ていますが、より柔軟に条件を指定できます)であり、後者は条件を指定できますが保証されるわけではなく、優先的に考慮されます。
“IgnoredDuringExecution”の意味するところは、nodeSelector
の機能と同様であり、Nodeのラベルが変更され、Podがその条件を満たさなくなった場合でも
PodはそのNodeで稼働し続けるということです。
将来的には、requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
に、PodのNode Affinityに記された必須要件を満たさなくなったNodeからそのPodを退避させることができる機能を備えたrequiredDuringSchedulingRequiredDuringExecution
が提供される予定です。
それぞれの使用例として、
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
は、”インテルCPUを供えたNode上でPodを稼働させる”、
preferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
は、”ゾーンXYZでPodの稼働を試みますが、実現不可能な場合には他の場所で稼働させる”
といった方法が挙げられます。
Node Affinityは、PodSpecのaffinity
フィールドにあるnodeAffinity
フィールドで特定します。
Node Affinityを使用したPodの例を以下に示します:
pods/pod-with-node-affinity.yaml
|
---|
|
このNode Affinityでは、Podはキーがkubernetes.io/e2e-az-name
、値がe2e-az1
またはe2e-az2
のラベルが付与されたNodeにしか配置されません。
加えて、キーがanother-node-label-key
、値がanother-node-label-value
のラベルが付与されたNodeが優先されます。
この例ではオペレーターIn
が使われています。
Node Affinityでは、In
、NotIn
、Exists
、DoesNotExist
、Gt
、Lt
のオペレーターが使用できます。
NotIn
とDoesNotExist
はNode Anti-Affinity、またはPodを特定のNodeにスケジュールさせない場合に使われるTaintsに使用します。
nodeSelector
とnodeAffinity
の両方を指定した場合、Podは両方の条件を満たすNodeにスケジュールされます。
nodeAffinity
内で複数のnodeSelectorTerms
を指定した場合、PodはいずれかのnodeSelectorTerms
を満たしたNodeへスケジュールされます。
nodeSelectorTerms
内で複数のmatchExpressions
を指定した場合にはPodは全てのmatchExpressions
を満たしたNodeへスケジュールされます。
PodがスケジュールされたNodeのラベルを削除したり変更しても、Podは削除されません。 言い換えると、AffinityはPodをスケジュールする際にのみ考慮されます。
preferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
内のweight
フィールドは、1から100の範囲で指定します。
全ての必要条件(リソースやRequiredDuringScheduling Affinity等)を満たしたNodeに対して、スケジューラーはそのNodeがMatchExpressionsを満たした場合に、このフィルードの”weight”を加算して合計を計算します。
このスコアがNodeの他の優先機能のスコアと組み合わせれ、最も高いスコアを有したNodeが優先されます。
Inter-Pod AffinityとAnti-Affinityは、Nodeのラベルではなく、すでにNodeで稼働しているPodのラベルに従ってPodがスケジュールされるNodeを制限します。
このポリシーは、”XにてルールYを満たすPodがすでに稼働している場合、このPodもXで稼働させる(Anti-Affinityの場合は稼働させない)“という形式です。
Yはnamespaceのリストで指定したLabelSelectorで表されます。
Nodeと異なり、Podはnamespaceで区切られているため(それゆえPodのラベルも暗黙的にnamespaceで区切られます)、Podのラベルを指定するlabel selectorは、どのnamespaceにselectorを適用するかを指定する必要があります。
概念的に、XはNodeや、ラック、クラウドプロバイダゾーン、クラウドプロバイダのリージョン等を表すトポロジードメインです。
これらを表すためにシステムが使用するNode LabelのキーであるtopologyKey
を使うことで、トポロジードメインを指定することができます。
先述のセクション補足: ビルトインNodeラベルにてラベルの例が紹介されています。
備考: Inter-Pod AffinityとAnti-Affinityは、大規模なクラスター上で使用する際にスケジューリングを非常に遅くする恐れのある多くの処理を要します。 そのため、数百台以上のNodeから成るクラスターでは使用することを推奨されません。
備考: Pod Anti-Affinityは、Nodeに必ずラベルが付与されている必要があります。 例えば、クラスターの全てのNodeが、topologyKey
で指定されたものに合致する適切なラベルが必要になります。 それらが付与されていないNodeが存在する場合、意図しない挙動を示すことがあります。
Node Affinityと同様に、Pod AffinityとPod Anti-Affinityにも必須条件と優先条件を示すrequiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
とpreferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
があります。
前述のNode Affinityのセクションを参照してください。
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
を指定するAffinityの使用例は、”Service AのPodとService BのPodが密に通信する際、それらを同じゾーンで稼働させる場合”です。
また、preferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
を指定するAnti-Affinityの使用例は、”ゾーンをまたいでPodのサービスを稼働させる場合”(Podの数はゾーンの数よりも多いため、必須条件を指定すると合理的ではありません)です。
Inter-Pod Affinityは、PodSpecのaffinity
フィールド内にpodAffinity
で指定し、Inter-Pod Anti-Affinityは、podAntiAffinity
で指定します。
pods/pod-with-pod-affinity.yaml
|
---|
|
このPodのAffifnityは、Pod AffinityとPod Anti-Affinityを1つずつ定義しています。
この例では、podAffinity
にrequiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
、podAntiAffinity
にpreferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
が設定されています。
Pod Affinityは、「キーが”security”、値が”S1”のラベルが付与されたPodが少なくとも1つは稼働しているNodeが同じゾーンにあれば、PodはそのNodeにスケジュールされる」という条件を指定しています(より正確には、キーが”security”、値が”S1”のラベルが付与されたPodが稼働しており、キーがfailure-domain.beta.kubernetes.io/zone
、値がVであるNodeが少なくとも1つはある状態で、
Node Nがキーfailure-domain.beta.kubernetes.io/zone
、値Vのラベルを持つ場合に、PodはNode Nで稼働させることができます)。
Pod Anti-Affinityは、「すでにあるNode上で、キーが”security”、値が”S2”であるPodが稼働している場合に、Podを可能な限りそのNode上で稼働させない」という条件を指定しています
(topologyKey
がfailure-domain.beta.kubernetes.io/zone
であった場合、キーが”security”、値が”S2”であるであるPodが稼働しているゾーンと同じゾーン内のNodeにはスケジュールされなくなります)。
Pod AffinityとPod Anti-Affinityや、requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
とpreferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
に関する他の使用例はデザインドックを参照してください。
Pod AffinityとPod Anti-Affinityで使用できるオペレーターは、In
、NotIn
、 Exists
、 DoesNotExist
です。
原則として、topologyKey
には任意のラベルとキーが使用できます。
しかし、パフォーマンスやセキュリティの観点から、以下の制約があります:
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
を指定したPod Anti-Affinityでは、topologyKey
を指定しないことは許可されていません。requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
を指定したPod Anti-Affinityでは、kubernetes.io/hostname
のtopologyKey
を制限するため、アドミッションコントローラーLimitPodHardAntiAffinityTopology
が導入されました。
トポロジーをカスタマイズする場合には、アドミッションコントローラーを修正または無効化する必要があります。preferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
を指定したPod Anti-Affinityでは、topologyKey
を指定しなかった場合、”全てのトポロジー”と解釈されます(“全てのトポロジー”とは、ここではkubernetes.io/hostname
、failure-domain.beta.kubernetes.io/zone
、failure-domain.beta.kubernetes.io/region
を合わせたものを意味します)。topologyKey
は任意のラベルとキーを指定することができあます。labelSelector
とtopologyKey
に加え、labelSelector
が合致すべきnamespaces
のリストを特定することも可能です(これはlabelSelector
とtopologyKey
を定義することと同等です)。
省略した場合や空の場合は、AffinityとAnti-Affinityが定義されたPodのnamespaceがデフォルトで設定されます。
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution
が指定されたAffinityとAnti-Affinityでは、matchExpressions
に記載された全ての条件が満たされるNodeにPodがスケジュールされます。
Inter-Pod AffinityとAnti-Affinityは、ReplicaSet、StatefulSet、Deploymentなどのより高レベルなコレクションと併せて使用すると更に有用です。 Workloadが、Node等の定義された同じトポロジーに共存させるよう、簡単に設定できます。
3つのノードから成るクラスターでは、ウェブアプリケーションはredisのようにインメモリキャッシュを保持しています。 このような場合、ウェブサーバーは可能な限りキャッシュと共存させることが望ましいです。
ラベルapp=store
を付与した3つのレプリカから成るredisのdeploymentを記述したyamlファイルを示します。
Deploymentには、1つのNodeにレプリカを共存させないためにPodAntiAffinity
を付与しています。
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: redis-cache
spec:
selector:
matchLabels:
app: store
replicas: 3
template:
metadata:
labels:
app: store
spec:
affinity:
podAntiAffinity:
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution:
- labelSelector:
matchExpressions:
- key: app
operator: In
values:
- store
topologyKey: "kubernetes.io/hostname"
containers:
- name: redis-server
image: redis:3.2-alpine
ウェブサーバーのDeploymentを記載した以下のyamlファイルには、podAntiAffinity
とpodAffinity
が設定されています。
全てのレプリカがapp=store
のラベルが付与されたPodと同じゾーンで稼働するよう、スケジューラーに設定されます。
また、それぞれのウェブサーバーは1つのノードで稼働されないことも保証されます。
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: web-server
spec:
selector:
matchLabels:
app: web-store
replicas: 3
template:
metadata:
labels:
app: web-store
spec:
affinity:
podAntiAffinity:
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution:
- labelSelector:
matchExpressions:
- key: app
operator: In
values:
- web-store
topologyKey: "kubernetes.io/hostname"
podAffinity:
requiredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution:
- labelSelector:
matchExpressions:
- key: app
operator: In
values:
- store
topologyKey: "kubernetes.io/hostname"
containers:
- name: web-app
image: nginx:1.12-alpine
上記2つのDeploymentが生成されると、3つのノードは以下のようになります。
node-1 | node-2 | node-3 |
---|---|---|
webserver-1 | webserver-2 | webserver-3 |
cache-1 | cache-2 | cache-3 |
このように、3つのweb-server
は期待通り自動的にキャッシュと共存しています。
kubectl get pods -o wide
出力は以下のようになります:
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE
redis-cache-1450370735-6dzlj 1/1 Running 0 8m 10.192.4.2 kube-node-3
redis-cache-1450370735-j2j96 1/1 Running 0 8m 10.192.2.2 kube-node-1
redis-cache-1450370735-z73mh 1/1 Running 0 8m 10.192.3.1 kube-node-2
web-server-1287567482-5d4dz 1/1 Running 0 7m 10.192.2.3 kube-node-1
web-server-1287567482-6f7v5 1/1 Running 0 7m 10.192.4.3 kube-node-3
web-server-1287567482-s330j 1/1 Running 0 7m 10.192.3.2 kube-node-2
上記の例では PodAntiAffinity
をtopologyKey: "kubernetes.io/hostname"
と合わせて指定することで、redisクラスター内の2つのインスタンスが同じホストにデプロイされない場合を扱いました。
同様の方法で、Anti-Affinityを用いて高可用性を実現したStatefulSetの使用例はZooKeeper tutorialを参照してください。
nodeName
はNodeの選択を制限する最も簡単な方法ですが、制約があることからあまり使用されません。
nodeName
はPodSpecのフィールドです。
ここに値が設定されると、schedulerはそのPodを考慮しなくなり、その名前が付与されているNodeのkubeletはPodを稼働させようとします。
そのため、PodSpecにnodeName
が指定されると、上述のNodeの選択方法よりも優先されます。
nodeName
を使用することによる制約は以下の通りです:
nodeName
を指定したPodの設定ファイルの例を示します:
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: nginx
spec:
containers:
- name: nginx
image: nginx
nodeName: kube-01
上記のPodはkube-01という名前のNodeで稼働します。
Taintsを使うことで、NodeはPodを追い出すことができます。
Node Affinityと Inter-Pod Affinity/Anti-Affinity には、Taintsの要点に関して様々な背景が紹介されています。
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